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3話 初めてのプレゼントとティナの涙

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-12-22 07:31:55

 受付嬢の説明は、以前ティナがしてくれた説明とほとんど同じだったが、魔術師の杖に付けると魔法が倍増する効果があるらしいという追加情報があった。それは、そらにはあまり関係なさそうかな。そらは収納に大量に余っている魔石を思い浮かべ、家に帰ったら、その魔石を使って、杖を作ってティナにプレゼントしようとそらは心の中で思った。

「魔石は、どうしますか?」

 受付嬢の声に、そらはハッとして、ティナへのプレゼントを作ることを考え事をしていて我に返った。少し、顔が熱くなったのを感じる。

「あ、はい。売ります!」

 そらは慌てて答えた。

「承知いたしました。鑑定結果が出ましたので、こちらが報酬です」

 受付嬢は計算を終え、ずっしりと重い革袋をカウンター越しにそらへ差し出した。冷たい金貨の塊が手に伝わると、予想以上の重みにそらは驚いた。

「ありがとう」

「討伐お疲れ様でした」

 受付嬢は丁寧に会釈をし、次の客へと視線を移した。

 家に帰ると、そらは一息つく間も惜しんでさっそく外へ出た。皆に気づかれないよう、一人でこっそりとワイバーンのドラゴンの魔石を加工し始めた。超希少なドラゴンの魔石だが、そらにはそこまで魅力を感じなかった。それよりも邪魔で仕方がない。バスケットボールの八個分もある巨大な魔石は、加工しなければ持ち運ぶアイテムとしては使い物にならない。

 そらは便利なスキルを使って、その巨大な魔石をまるで粘土を扱うように分離させ、野球ボールほどの大きさの塊を取り出した。さらに念を入れて、それを完璧に近い、艶のある綺麗な球体に仕上げた。

 イメージしたのは、白銀に輝くミスリル製の杖だった。その材質は、ひんやりと冷たく、手に吸い付くような感触を想像させる。そらは精緻な装飾を施した杖の骨格を作り上げ、そこに加工したワイバーンの魔石をはめ込んだ。魔力との相性が良いと聞いた気がするし、物理攻撃力も高そうで、何より軽くて持ち運びが楽そうだ。完成した杖は、光を受けて静かに輝いていた。

 ちなみに、これがミスリル製だということは秘密にしておこう。その希少な価値がバレたら、ティナに「こんな高価なものはいりません!」と、真剣な顔で絶対に怒られそうな気がする。そらは出来上がった杖を眺め、その秘密を心に留めた。

 完成した杖を試してみようと、そらは軽く、的に向かってファイアショットを撃ってみた。ただ、いつもの気軽な気持ちでイメージを済ませただけだったのに。

 杖の先端に嵌め込まれた魔石がシュワ―と音を立てるほど激しく光を吸収し、一瞬で膨大な魔力を凝縮した。杖を伝って放出された炎は、普段のファイアショットの可愛らしい火の玉とは似ても似つかない、巨大な火炎の塊だった。唸りを上げながら、周囲の空気を一気に歪ませるほどの熱を放射する。

 それが的に激突した。轟音がキャンプ地に響き渡り、衝撃波が地面を揺らす。的は受け止める術もなく、木片や土を撒き散らしながら、一瞬で大破した。焦げ臭い匂いと、まだくすぶる炎の残滓が辺りに漂う。想定外の威力に、そらは思わず目を丸くした。

「おぉ……」

 そらは目の前で起こった、常識外れな出来事に呆然と声を漏らした。

(確実に魔力が倍増されているね。かなりイメージと魔力を抑えたと思うんだけど。それに、そもそもファイアショットって爆発しないよな? 魔石ってスゴイな……)

 杖の予想外の性能に、そらは驚きと感動が入り混じった表情を浮かべた。

 視線を家の建物へ戻すと、ティナは、フィオを抱きかかえソファーに座り、エルやアリアと楽しそうに話をしていた。その顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。

 そらは窓の外からティナへ向かい、手で合図を送り、口元に人差し指を立てて、こっそりと笑顔で手招きをした。

 ティナはそらの姿を認めると瞬間、頬を桃色に染めた。彼女はそらの意図を察したのか、周りに気付かれないように慌てて、でも内緒の行為に胸を高鳴らせながら、外へと出てきた。

 「ごめんなさい、ちょっと」と周囲に聞こえないほどの小声で断りを入れ、フィオをそっとエルに託す。ティナは猫のように抜き足差し足で、音を立てないように床を滑るように移動した。その瞳はきょろきょろと周りを警戒し、嬉しそうな顔で色々な期待をしている表情をしていた。まるで、主人に呼ばれた忠実な小動物のようだった。彼女は扉をゆっくりと開け、外の冷たい空気の中へ、そらの待つ場所へとそっと身を滑り込ませた。

「どうしたの? わたしに……用でもあるのかな?」

 扉から滑り出てきたティナは、まだ胸が高鳴っているのか、少しだけ呼吸を乱しながら、何かを察したように平静を装いながらもモジモジと指先をいじりながら聞いてきた。外の冷たいそよ風が火照った頬に心地よい。

「えっと……いつも、ティナにお世話になってるから、ちょっとプレゼントをって思って作ってみたんだ」

 そらは少し照れ臭そうに言いながら、隠していた革のケースから出来上がったばかりのミスリル製の杖を取り出し、ティナに差し出した。陽の光を浴びて淡く輝く白銀と、先端の魔石の僅かな光が幻想的だった。

「え? なんで? もらって良いの?」

 ティナは驚いたような顔でそらを見つめた。彼女の瞳は真実を探るように揺らめいている。杖の持つ、尋常ではない魔力の波動を感じ取っているのだろうか。

「いつもお世話になっているからね」

 そらは微笑み、静かにティナの手に杖を乗せた。ミスリルの冷たい感触と、魔石の強い魔力が手のひらに伝わる。

「あ、ありがと!! 生まれて初めて……プレゼントをいただきました……」

 ティナは差し出された杖を両手でそっと抱え込み、その重みと温かさを確かめた。彼女の声は喜びと感動で震えていた。きらきらと輝くティナの目が潤んでいるように見えた。太陽の光を浴びて、その瞳は宝石のように煌めいていた。

「さっそく使ってみて」

 そらは言いながら、先ほど破壊されたのとは別の、頑丈そうな木材で組まれた大きめの的を魔法で用意した。

「魔法は、何が良いですかね?」

 ティナは、手に持った杖を大事そうに見つめ、興奮気味に尋ねた。表情には期待と緊張が入り混じっていた。

「試すなら、低級魔法のファイアショットとかじゃないかな」

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